還暦を目前にしてのできごと

私へねめは、1958年7月生まれの男である。

 

2017年12月半ばのある日の食事中、

舌の左側奥に何かのはずみで舌の端を噛んでしまった後のような痛みを感じた。

その時はあまり気にもとめずにいたが、

そのうち消えるだろうと思っていた痛みが数日経っても消えず、

口内炎の薬を塗り始めたもののこれも効かない。

いつまでも消えない痛みとともに、凄まじいまでの倦怠感が襲い、

何をするのも億劫になる。

 

一体これは何だろうと思いながら、

積年の疲れが出たのかなどと安直に考えていたある瞬間、

全く論理的思考回路を経ずにパッと思いついたのが、

 

「舌癌」

 

という単語だった。

 

すぐにネットで調べ、舌癌を患った舌の写真を見、症状の説明を読む。

鏡で自分の舌を見て、舌の左奥側面に白い輪っか状の広がりを確認、

指で触ってその中心部に固いしこりがある事も合わせて確認する。

ドンピシャだ。

どう見てもこれしかない。

ネットの写真なんて自分かと思うくらいそのままで笑ってしまいそうだ。

 

私は23年前に胃癌で父親を亡くしており、癌の家系という事は認識してはいたが、

こんな形でいきなり、しかも舌癌とは思いもよらなかった。

とはいえ、まだ素人判断であり、

癌ではない可能性もある反面本当に癌だった場合の程度や転移など心配なので、

休日ではあったがカミさんに付き合ってもらって、市内の休日診療所に行った。

最初に診てもらった内科の医者が「わからない」(!?)との事で歯科に回される。

(そもそも舌癌は口腔外科すなわち歯科の範疇だったようだが、頭になかった。)

そこで診てくれた医師が、別のもっと上の先生と何やら相談したりして、

最後に紹介状を書くから市内の大学病院で診てもらうようにと言われた。

この段階でもはや癌である可能性は限りなく高いだろうと覚悟はできた。

 

紹介状を手にバスに乗って指定された大学病院の夜間休日窓口に行き、

口腔外科の外来診察を受ける。

そこでは医師が見て、触って、小さなブラシで患部の表層をこすり取ってという診察で、

後日改めて外来に来るようにと、その場で来院日時の予約を入れてもらった。

 

後日の外来で、奥の部屋に通され、

学生か研修医かと思われる何人かがいる前で担当の教授の話を聞く。

前回採った組織の検査では、

癌ではないという1•2、どちらとも言えない3、癌ですねという4•5の5段階の

「5」という判定であったと、

つまり間違いなく舌癌であり、ステージはⅡだとの結果を告げられた。

 

改めて病変部の組織サンプルを採取された後、

何日かに分けてCTと胸部レントゲン、食道から胃と大腸の内視鏡検査、

MRI、PET-CT(全身ガン病巣検査)と検査が続く。

すべての検査が終わって、口腔外科からOCC(口腔がんセンター)に科が移り、

そこの主治医から改めて説明を受けた。

 

手術予定は1/22の12時から4〜5時間。

病変部とその周囲で舌の左側1/4程度を切除、

同時に明らかな転移は認められないものの、PET-CTで怪しい光が見えている

左頸部リンパ節を上半分取り除く。

また、舌根に近い部分の切除を伴うため、

術後の腫れで呼吸の際息苦しくなることの予防的措置として、

喉に直径5ミリほどの穴を開け管を通す処置を最後に行う。

入院予定は術後2週間、との事であった。

現状で他の部位や臓器に転移は見られず、余命宣告のようなものもなかった。

 

発見が早く初期であったこと、進行性でなかったこと、

発見の段階で舌癌に多い頸部リンパ節と肺への転移がなかったことなど、

いい条件が重なった事が幸いしたようだ。

基本的に「今の悪いところを取ってしまえばすっかり治る」パターンということ。

よしとするべきなのだろう。

 

手術について

診断名:左側舌偏平上皮癌(T2N0M0 StageⅡ)
病態:左側舌縁部に「がん」を認めます。術前の画像検査では、左側頸部にリンパ節の腫大を認め、確定的ではないが転移を疑う所見があります。またその他臓器への明らかな転移所見を認めておりません。
術式:①舌悪性腫瘍切除術(舌部分切除)②左側頸部郭清術(肩甲舌骨筋上)③輪状甲状間膜穿刺または気管切開術
・今回手術で、舌に発生したがんを切除します。明らかな頸部リンパ節転移はありませんが、転移のリスク高いため②の予防的頸部郭清術を行います。呼吸管理目的に③の輪状甲状間膜穿刺を行います。
*腫脹や浮腫にて明らかな気道狭窄・呼吸困難を認めた場合は、気管切開を行い気管チューブを1〜2週間程度留置し呼吸管理を行います。

後併発症・偶発症
出血・感染といった通常の手術に伴う併発症は起こりえると考えますが、予測不可能な偶発症(肺炎、心臓発作、脳梗塞など)の発生を事前に予測することは不可能です。予期せぬ偶発症が発生した場合は、適宜対応し最善を尽くしますが、年齢的なリスクもあることから致命的になることもあります。
・手術により口腔機能の低下が予想されます。口腔機能そのものに影響を及ぼす結果、食事・嚥下・会話などに障害が出る可能性があります。術後リハビリにて改善は見込めますが、個人差があるため障害の程度は予測できません。

治療後の予定
・切除した腫瘍及びリンパ節は病理検査を行います。病理結果により放射線治療や化学療法の追加治療が必要になる場合があります。

(本人及び家族への説明及び同意書)

 

このブログは、

たいして大きな病気もなく、

ましてや外科手術など受けたこともなく人生60年を迎えようとしていたごく普通の男が、

突然舌癌で手術となった入院記録である。

▶ 手術前夜